明け方に微睡んだ中で、久しぶりに黒髪の王子様の夢を見た。
王子様はなにも言わずに、あたしを見てるだけで。
今までよく見えなかった瞳の色が一瞬だけ、霞から垣間見えた。
黒曜石の如き、射干玉の瞳。
夜の闇より深い昏さに、キュンと胸が締めつけられたあたしは、思わず口に出してた。
――ねえ、王子様。
あなたはどこの誰なの?
あたしの中にいるただの幻なの?
それとも、本当にいる人なの?
ずっと見守って来てくれたから、知りたかった。
誰にも話したことはない、誰も存在すら知らないあたしの王子様。
だけど、王子様はなにも答えずに去っていった。
あたしは、彼を追えない。
もし追いかけてその手を取れば、きっと後悔する予感がしたから。
……そういえば、黒髪の王子様はいつからあたしの夢に出るようになったっけ?
保育園時代には見なかった気がする。
確か、チカやケンと会った、春の終わり頃……。
緑が眩しい季節だった。



