だけど、その楔は、解かれてく。
ナギによって。
あたしが大好きな、愛するひとだから。
ナギの唇は生き物みたいに温かくて、あたしの肌を伝って穢れを祓ってく。
忌まわしい記憶と戒めを、浄めて塗り替えてくれる。
その胸の中であたしは生まれ変わるために、彼の全てを受けとめた。
「杏子……おまえは……俺だけを信じろ。……何があっても……俺だけを……」
あたしを腕の中に閉じ込めたナギは、耳元で繰り返し繰り返しそう囁いた。
あたしはそれに答える代わりに、彼の背中に腕を回した。
あたしの中にあった、澱みと鎖。
あたしを縛り付けて放さなかったもの。
それを思い出す時もあるかもしれない。
だけど……。
今は、きっと大丈夫。
ナギの想いが、新しい記憶が、あたしの中に刻みつけられたから。
愛じゃないかもしれない。
だけど、でも。
抱き合う中であたしを想ってくれてた、その答えがあったから。



