シャツを掴んだあたしの手に、微かな重みとひんやりとした冷たさが感じられた。


ナギの手だって、見なくても判るよ。


大好きな人の手だから。


ナギの手のひらはほんの少しだけ、他の人より体温が低い。

どこか柔らかさもあるのに、確かに男の人らしい無骨さもあるの。


その手はあたしの手を取ると、なぜか持ち上げてあたしの首筋にあてる。


「赤石に何かされたのか」


ナギに言われて、ドキドキと高鳴ってたあたしの心臓が一瞬強く跳ねた。


なんで……わかるの!?


赤石があたしにした事を、まさかナギは見てたの!?


あたしの頭は混乱しだした。


ナギが見てたかという疑問、赤石の意図、どう言い訳すればいいのか。


一度にいろんな考えや感情が渦巻いて、自分でも収集が着かなかった。



けど……



ナギは首筋にあてた手をあたしの顎に当てて顔を上向かせた、と思えば。


何の躊躇いも予告もなく、唇を重ねてきた。


「……今日は、帰れそうにないな」