「そろそろ戻るぞ」
ナギがそう言って立ち上がった。
こんなにもあっけなく、幸せな時間は終わるんだ。
……ううん、違う。
幸せに感じてたのは、あたしだけかもしれない。
彼を信じて、というスズメの声が何度も心に木霊する。
本当に、本当にそうなの?
あたしは周りの荷物を集めて身支度を整えながら、疲れて寝入った瑛太君を抱きかかえてベビーカーに乗せるナギを見た。
……あたしにも、少しは優しくして。
ほとんど無意識のうちだった。
荷物を纏めたあたしは、ベビーカーのベルトを閉めるナギの後ろに立って、彼のシャツの裾を握りしめてたから。
「……離せ、アホウドリアタマ」
「やだ!」
あたしはもう、抑えられなくなってた。
「あたしも……あたしにも優しくしてよ。
瑛太君への優しさの十分の一でもいいから……半月ぶりに逢えたんだよ?
もっと2人っきりで過ごしたいよ。
わがまま言ってるのは解ってる。だけど……」
あたしの目の奥が熱くなり、視界がぼやけた。



