オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

昨日の事で落ち込むほど愁傷なヤツじゃないし。

「ねえ、ナギってば!」

あたしが繰り返し呼んでるのに、シカトこいてくれましたよ、この人は。


あたしは息を吸い、胸に手を当てて鼓動を鎮めた。


ナギと知り合って1ヶ月経つけど、コイツの事は何も知らない。


だけど、1ヶ月間毎日顔を見ていれば、解ることもある。


ナギにすれば、それこそ「余計なコトを考えてる暇があるなら、国語辞典でも読んで学習してろ」なんだろうけど。


……なんでかな。


あたしは椅子の背後からナギの側面に回り込むと、思いきって顔をのぞき込んでみた。


……ナギの目は、何も映してない様に見えた。


仏頂面とかなんて生易しいものじゃない。


“人”として、欠けてはいけないものを失ってる。


どうしてだか、そんな気がして。


あたしは……


思わず体が動いてた。


バッチン☆


自分でも驚いた事に、ナギの頬を両手で軽く叩いた後、そのまま手のひらで包み込んで彼の顔をこっちに向かせたんだ。