「杏子」
急にナギに名前を呼ばれて、心臓が飛び出すかと思いました、はい。
「あ、な、なに?」
考えごとして気が逸れてたから、目の前にいる2人に意識を戻した。
……ら。
ナギはあたしにプラスチックのパックを差し出した。
「食べろ」
……珍しい事もあるわ。
そう思いながら受け取ったモノをよくよく見てみれば。
どうすればこれくらいにぐちゃぐちゃにできるか、と思える程に崩壊した、もと広島焼きらしき物体。
まるっきりミキサーですりつぶして、また焼いてみましたみたいな状態。
瑛太君はフランクフルトを食べてる。
もしかしたらあたし、残飯処理係ですか?
それでも残すのはもったいないから、あたしは覚悟を決めて広島焼きに箸をつけた。
「おいし!」
「そうか、よかったな」
瑛太君はナギに向かってにっこり笑ったけど、釣られたのか微かに笑顔になった彼に、瑛太君はフランクフルトをちぎって差し出した。



