「いいですか、貴女は気分が悪くてここで私に介抱されていた……そういうことです」
耳元で低くそう囁かれて、あたしは信じられない気分だった。
「なに言って……あんたがしたのは」
「おや、皆さんに正直にありのままをお話ししますか?
私にキスされ押し倒されたと、凪専務に仰いますか?」
凪専務……ナギのこと?
なんで、この人がナギのコトを!?
混乱しだしたあたしの耳に、砂利道を歩いてくる足音が聴こえた。
「凪専務、田辺さまとのお話は終わりましたか?」
男がその方角に向かって声を掛けたのを理解したあたしの心臓の鼓動は、一気に速さを増す。
その身のこなしと同じで、足音も規則正しくて無駄がない。
ナギが近づいてきてる、ってはっきり解った。
見なくても解る。
彼がいるだけで、周りの空気が変わってくから。
それだけじゃない、ちょっとした動きのクセなんかもわかる。
だって、大好きだから。
いつも見てるから。



