もちろんあたしはあらん限りの力で逃れよう、退かせようとしたけど、力強さが桁違いな腕に全て阻まれる。
アプレクターじいちゃんもいろいろ努力してくれるけど、なぜか男には一切通用しない。
こんな時に限って近くに人の気配はなくて、あたしは心の中でナギばかりを呼んでた。
(やだ!助けて、助けてナギ!!)
ふっ、と体が軽くなり、押さえつけてくる力が緩んだ。
あたしはその隙を突いて、すぐに男の下から逃れたけど、空気に触れてひんやりと頬が冷えたことで、やっと自分が涙を流してたんだと気付いた。
あたしはベンチの隅に体をずらし、自分を守るように体を抱きしめながら、ぼやけた視界の向こう側にいる男を思いっきり睨みつけた。
何か言ってやりたいのに、力が抜けそうな体の震えを抑えるだけで精一杯で。
だけど、涙で滲んでよく見えない視界にも、男が口の端を上げて笑んだのがはっきりと理解出来た。
そして、男がまたあたしに顔を近づけてきたからあたしは逃げようとしたけど、手首を掴まれてあっという間に引き寄せられた。



