オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

《何日も飲まず食わずで衰弱していた彼女は、それでもあなただけを案じていたのですよ》


優しげな声は変わらないが、口調も変えず淡々と話すからこそ、その真実は俺の胸に鋭く深く突き刺さった。


そして、ザトウクジラは真実を告げた。


《それなのに彼女は自分の命を分け与えてでも、あなたの命を延ばしたいと強く願った。

たとえ自分が明日までの命となっても、あなたに生きて欲しいと。

その想いの強さはバンドウイルカを突き動かし、私が喚ばれる程でした。

私はあなたの行いや想いを鑑み、彼女の願いを聞き入れました。

今、あなたの中に彼女の命が分け与えられました。

人の寿命を知る術は私にもありません。
ですから、あなた方の命がいつまで保つか私にも判らない。
ですが、だからこそこれからを大切に生きなさい、凪。我が愛し子よ》


そう語りかけてきたザトウクジラは、再び唄いながらゆっくりと体を翻し、大海原へと去っていった。


黄金色に輝く光の欠片を残して。


その歌は、どこまでもどこまでも遠く響いていた。