やっと帰ってこられたんだね、忠司さんは。
60年もの時を越えて。
最愛の人の元へ。
やっと逢えたんだね……。
誰もが、静かにその再会を見守った。
「お帰りなさい、あなた……あまりに待ちすぎて私はこんなにしわくちゃになってしまったけれど、生きていてよかったわ。
あなたに逢えたし、私の知らないあなたも知られた。
それに、アリスというかけがえないお友達も得たわ。
あの世で先にゆっくり休んでいてくださいな。
私はあなたに再会できた時にいっぱいお話出来るように、残り短い命を精一杯に生きますわね」
絹枝さんは遺骨にそう語りかけ、アリスに微笑みかけた。
「アリス、忠司さまと本のお話をいっぱいしましょうね」
絹枝さんの柔らかな声に、アリスは朝日のような笑顔で頷いた。
空は、抜けるような蒼い皐月晴れだった。