「ちょっと、ナギ……!」
次々と冷酷な言葉を平然と掛けるナギを止めようとしたけど。
狩野さんに止められてそれは叶わなかった。
「あの子は平然としてるように見えるけど、あなたなら判るでしょう?
本当は気絶しても良いくらいの状態なのに、精神力で保たせてるの。
全てはあなたを守る為よ、杏子。
あの子はわざと自分が冷徹になることで、あなたが攻撃の的から外れるように振る舞ってるの。
だから、ちゃんと見ていてあげなさい。
あの子の最後の仕事ぶりを」
狩野さんの言葉は、あたしの胸にズンと響いた。
……あたしを護るために。
あたしは懸命に我慢したけど、瞳の奥から零れる滴が溢れて、視界がぼやけた。
それが嫌だから、一生懸命に涙を指で拭った。
少しでもナギの姿を覚えていたいから。
どんな話し方をしたか、どんな表情を作るか、どんな仕草をするか……。
一瞬でも長く、彼の姿を記憶に留めておきたくて。
たとえ今すぐ亡くなったとしても、後悔しないように。



