嘆き悲しんだアリスは責任を感じて、更にがむしゃらに働くようになった。
その最中で起こった悲劇……。
アリスはこの時罹った肺炎がもとで亡くなった。
誰もお金がなくて医者を呼べなかったゆえに。
アリスは13歳という幼さで短い生涯を閉じた。
暖かい寝具もなく、すきま風吹きすさぶ中で。
(ごめんなさい……タダシ。約束……守れなかった……あなたが文章を書いて……わたしが絵を描く……ずっと……夢見てた……けど)
アリスは亡くなる直前、忠司さんに宛てて最初で最後の手紙を書いた。
最後の気力を振り絞って。
そして、力尽きた後。
その手紙は兄弟の手で大切に保管され、兄弟が働けるようになってお金に余裕が出来た数年後に投函された。
それは、太平洋戦争が勃発する直前で。
手紙はアリスの遺髪と共に、忠司さんの元へ届けられた。
同封されたアリスが描いたイラストは、家族みんなが暖かい服を着て大きなお屋敷に住み、お腹いっぱいにご馳走を食べる絵だった。



