「トキ、なにぐずぐずしてるんだい!お嬢さまも奥さまも待ちくたびれておいでだよ!早くなさい!」
「は、はい、お母さん!」
そう返事した女の子はそばかすだらけで地味だけど、なんとなく雰囲気があたしに似てた。
背中に大きなリュックを背負い、両手には3つずつカバンを下げてた。
「さ、奥さま」
おばさんが女性を抱きかかえるように支え、女の子は少女に手を差し伸べた。
「さあ、まいりましょう、絹枝お嬢さま。このトキがついております。何の心配もございませんからね。きっと助かりますとも」
明るい笑顔でそう言った女の子に、少女……若き日の絹枝さんは硬い表情を和らげて口元に微かな笑みを浮かべた。
「本当に、トキったら元気よね。あなたがそう言ってくれると大丈夫な気がするから不思議だわ」
「はい!ドジでグズなトキの唯一の長所ですから。おまかせくださいな!」
腕まくりして頼もしいトキさんに、周りから苦笑が漏れたけど。
近くで爆音が響き、程なく隣家から火の手が上がった。



