その場に居た背が低い、痩せ型の男が突然叫んだ。
「自分は……自分は死にたくないです!川村少尉!郷里(くに)には、将来を誓った幼なじみと、病身の母が、自分の帰りを待っているのであります!」
そう叫んだ男は、懐からお守りらしき札を取り出した。
「母は、自分と佐知子の婚約を心から喜んでくれました!
余命半年と告げられながらも……自分と可愛がった佐知子の赤子を見るまでは死なないと。
佐知子とも約束したのです!将来は戦争で親を失った戦災孤児のための施設を作るのだと……佐知子は孤児でしたから、自分が死ねば、母と佐知子は2人ぼっちになってしまいます!!」
その男の叫びに呼応したように、他の兵士たちからも次々と声が上がった。
「自分も、故郷には幼い子どもが5人と老父がいます。
妻と母は空爆で亡くなりました……親戚も大半が防空壕への攻撃や大空襲で亡くなり、若い男は自分しかいません。
父は目と腰が悪いのですから、本当ならば今すぐ飛んで帰りたいほど心配で、出来たら自分が盾になって敵から守りたいのであります!」
血を吐くような叫びだった。



