《タダシは優しかったわ。わたしやみんなにお菓子を持ってきてくれたり、字や計算を教えてくれたり。
お金はなかったけど、楽しかった。
わたしはよくタダシと本を読みあってお喋りしたの……。
わたしとタダシの好みは不思議と似ていて、特に“不思議の国のアリス”の話になると、日が暮れるまで夢中でお話ししたわ。
タダシは童話作家になると夢を語ってたから、絵が得意だったわたしはタダシからいつかイラストを描いて欲しい、と誘われたから、約束したの。
大人になったらきっと約束を果たそう……って。
だから約束の証に、わたしはお別れの時タダシに“不思議の国のアリス”とバラを贈ったの。
タダシは太陽の色である赤い色とお花が好きだったから》
アリスがそこまで話した時だった。
黒い何かが唸りを上げながら空を切り、アリス目掛けて飛んできたのは。
だけど、近くにいた狩野さんがそれをあたかも予測していたかのように、光る剣を素速く抜いて飛んできたモノ弾いた。
弾かれたモノは……
切り離されてもわらわらと無数に蠢く黒髪だった。
怖いってば!



