「これだけ沖に出て大丈夫なんですか?海流に流されて戻れない危険性があるのでは……?
失礼ながら、このボートには推進力を発生させるエンジン等が見うけられませんが」
あたしの隣にいたマモル君が、絹枝さん達に聴こえない小さな声で狩野さんに訊ねたのはもっともかもしれない。
なんたってマモル君はアウトドアの経験が豊富だもんね。
予測できるトラブルなんかは前もって対処しておくんだな。
マモル君の問いかけにも、狩野さんはにこやかな表情を少しも変えずにしれっと答えた。
「ええ、その可能性はあるでしょうね。
でも、そうやきもきしなくとも平気よ。
どんなに海が荒れたところでこのボートは転覆しないし、流されもしないから」
狩野さんはそう言って、マモル君の手を取って何か渡した。
……ら?
マモル君の顔はなぜだか耳まで赤くなって、狩野さんの顔から目が離せないみたい。
「これは予備だけど、あなたが持っていてちょうだい。あなたが一番頼れそうだから。これがあればボートを自由に操縦出来るわ」



