「随分と厚化粧をしてどうした、ドーランアタマ。
春は動物の発情期だが、おまえまで発情しなくていい」
「だ……誰が発情期よ!」
あたしはムッときて、ナギの顔を見上げて噛みついたけど。
……ナギは
微笑んでた。
それは、あたしをバカにしたいつもの笑みじゃなくて。
優しくて暖かい、ナギの本当の笑顔だった。
胸がきゅっと締めつけられるみたいで、切なくて苦しい。
あたしはナギの顔がまともに見られなかった。
……ナギは
知ってるんだ。
自分の生命の事を。
だから……
今日という日を
大切にしようとしてる。
「馬の振動で舌を噛みきるなよ、ボロアタマ。こんな日に近くで自殺されちゃたまらん」
「誰がボロっての!あんたなんか牛乳も飲めないお子ちゃまのクセに。
今日のあんたのご飯はミルクプティングだけだからね!」
海に行く最中に喰らわしてくれるナギの毒舌に、あたしはわざといつも通りにして言い返した。



