「ここの世界の人間の医学的に言えば、確かにそう言えるでしょうね」
狩野さんは再びお湯を掬い取るけど、それは片手で。
「ナギは母親に構ってもらえない寂しさを、動物たちや植物たちとの触れ合いで埋めていたの。
仕方ないわよね……
この世に産み落とされた直後から、母親からは抱いて貰えるどころか顔すらまともに見てもらえなかったのだもの。
でも、その頃からナギは視る事が出来たの。
私たちが“アプレクター”……別名夢魔と呼ぶ存在を。
ナギにとっては、アプレクターも人間も動物たちも草木も関係なかった。
自分に関心を持ってくれる、唯一無二の心の寄りどころだったのが。
産土家に代々憑いていた、黄金色のアプレクターだったのよ。
動物たちと一緒に日が暮れるまで遊んで、アプレクターとはお話して。
ナギはそうして孤独を埋めていったの。
産土家は代々アプレクターを感じ敬う心を持つ人間が当主となっていたのだけれど。
ナギの曾祖父である産土太郎の時代から何かが狂い初めてしまった。
曾祖父太郎は曾祖母幸子を妻にした婿養子なのだけれど、強欲な人間で」



