あたしがそう話すと、狩野さんはやっぱり、と呟いた。
「本当に、ナギはあなたに何も教えてないのね。
私もあまり話したくないけど、仕方ないわ。
ナギに残された時間はあまりにも少ないものだから」
「えっ……?」
あたしは、耳を疑った。
ナギが……なに?
「3歳に起きた事件で、確かにナギは生命を取り留めたように見えるでしょうね」
でも、と狩野さんは手のひらのお湯をすべて零した。
最後の一滴が狩野さんの白い指を伝い、湯面に大きな波紋を起こした。
歪むのは、乱れるのは、湯面に映ったあたしの姿だけ?
「あの時、ナギは一度死んでるの」
さざ波が、起きた。
でもそれは……
あたしには大波となって打ち寄せる。
足元の力が抜けそうだった。
頭が鈍器で殴られたみたいに痛くて、真っ白で。
「それでも……蘇生したんですよね?
でなきゃ……生きてるはずかないじゃないですか」
あたしは力ない笑いで、狩野さんに言ってみた。



