「……O.K.。そこまで解ってるなら、真実のことを話しても良さそうね」
狩野さんは微笑みを解いて、少し硬いくらいの真剣な表情に変えた。
「真実……ですか」
あたしが鸚鵡返しで問うと、狩野さんはお湯を両手の手のひらで掬い取って見せた。
そして、そのお湯は指の隙間から滲み出しこぼれ落ちる。
「このお湯が大自然全体の生命だとすれば、私の手のひらにあるのがナギの生命」
狩野さんはそう言うと指の隙間をより開けたのか、お湯はいっそう速くこぼれ落ちてゆく。
手のひらのお湯が残りわずかになってから、狩野さんは再び指をきゅっと閉じた。
残ったお湯は……
小指の爪の大きさもない量で。
「あなたも知ってるでしょう?
ナギが3歳の頃に実の母に殺されかけた事件は」
狩野さんが問いかけてきたから、あたしは素直に頷いた。
「……はい。マモル君のお父さんが担当医だったとかで。
とても助かりそうになかったのに、奇跡的に生命を取り留めた……って聴きました」



