そうだったんだ。
忠司さんの生死が判らなくても、一人息子を亡くしても、60年以上もの長い年月を絹枝さんは独りで待ち続けてた。
まだたった16年しか生きてないあたしには、とても想像もつかない長い長い年月だった。
あたしが生きてきた人生だって決して楽とはいえなかったけど。
戦中と戦後を助けもなくたった独りで生き抜きながらも、絹枝さんはどんなに辛い境遇でも忠司さんを信じぬいた。
あたしは……
そんなに強く人を愛した事なんてなかった。
あたし自身はやっとナギが好きだって気付いたばかりで。
でも、ナギには肉体関係まである女の人がいて。
あたしは、それでナギから離れようと決心したんだけど。
絹枝さんの話を聴いているうちに、自分が恥ずかしくなってきた。
あたしの悪い癖は、確かめもしないのにこうだと決めつける事。
自分自身がそういう人間になりたくないと強く思ってた筈なのに。
幼なじみのチカにも、それはダメと諭した筈なのに。



