「何もかもあの時と同じですのに、時だけは変わってゆくものですねえ」
絹枝さんがポツリと自分から声を出したから、逆にあたしが聞き役に回る羽目になっちゃった。
「あの時?」
間抜けな鸚鵡返しであたしが訊けば、絹枝さんは薔薇の花を見ながらひとり語りを始めた。
「60年以上まえの昔でした、あの方が出征して行かれたのは。
今と同じ五月晴れの中で……
あの時もこんな風に、5月というのに不思議と桜の花が咲いたのです。
結婚して3ヶ月目の事でした。
あの方に赤紙……召集令状が来たのは。
当時私は18歳で、忠司様が19歳でした」
まるで昔を思い返すように、ゆっくりと絹枝さんは話してた。
「私は信じてました、あの方がきっと帰ってくると。
だって約束して下さったんですから。
必ず帰ってくると。
あの方は一度も約束を破ったり嘘をつくような方ではありませんでしたから、私は今でも信じて待ち続けます。
死が二人を分かつまでと誓った通りに」



