そして桜の花びらを放すと。
体を屈み込ませ膝を着くと、根元に咲いていた赤い薔薇の花を鷲掴みにして一気に引き抜いた。
棘で手が傷つき、血が流れるのも構わずに。
何をするのかと思えば……
忠司さんは岬の先端に歩いてゆくと、根元から引き抜いた薔薇を海に大きく放り投げた。
あたしは感じた。
忠司さんの心の痛みを。
何かと訣別する、そんな痛みと悲しみが。
あたしも似たような気持ちだから。
忠司さんの悲しみも心の痛みも、我が事のように理解できた。
あたしも、離れなきゃいけないから。
……泣いてるのは
忠司さんの心?
桜の気持ち?
『……さん! 渚さん!!』
呼ばないで……
あたしを呼ばないで。
帰りたくない。
《私はきっと帰ってきます……貴女の許へ》
えっ!?
その声に気を取られたあたしはあっという間に現実世界へ帰ってきたみたいで、視界にマモル君達の心配げな表情が飛び込んできた。



