「“私が忠司に贈った薔薇よ!こんなに綺麗に咲いてたなんて嬉しい”
って言ってる。
あの子は忠司さんの知り合いだったのか」
マモル君がそう訳してくれて、あたしはやっと思い出した。
薔薇園で視たヴィジョンを。
そのヴィジョンで視た事をマモル君に話すと、マモル君はハッキリと断言した。
「それはロンドンの時計塔と、ハシブトガラスより大きなワタリガラスだよ。
石の建築物が多いのは1600年代に起きたロンドン大火の影響で、燃えにくい石が建築素材として多用されたからなんだ。
灰色の空は当時のロンドンでは大気汚染による光化学スモッグが酷くて、だから霧の都なんて呼ばれたんだ」
「それじゃあ忠司さんは、子どもの時にはロンドンに行った事があるんだ」
「多分そうだろうね。
『不思議の国のアリス』が出版されたのはイギリスだから、それで少し合点がいったよ。
この薔薇と本は忠司さんがイギリスから持ち帰ったもので、たぶんかなり思い出深いものなんだろうね。
こうして株分けまでして植えてるんだから」



