忘れられるはずないよ。
あんなに幸せだった時間をくれた馬だもん。
芦毛馬は鼻を鳴らすと、大きな顔をいきなりあたしに近づけてきたからビックリしたけど。
何か言いたげに顔をすり寄せてきた。
それはまるで、大丈夫かと心配してくれてるみたいで。
「ありがとう、あたしは大丈夫だから」
そう言ったあたしはマモル君の方を見れば、意外な事に彼は『ありす』が芦毛馬に乗る手伝いをしてた。
「マモル君……その子が見えるの?」
あたしが訊くと、彼は首を横に振る。
「俺は気配を感じて声が聴こえるだけだよ。
声からしてまだ小学校高学年位の女の子だろうなってのは判るよ。
この子が馬に乗りたがってたから、手伝ってあげたんだ。
それにしても、綺麗なクイーンズ・イングリッシュだな。
少なくともアメリカ人の発言とは微妙に違う」
「クイーンズ?」
「イギリスの標準英語の事だよ。今は女王在位だからクイーンズで、王だったらキングズ。
イギリス南部の上流階級が使う、日本語の標準語みたいなもんかな」



