《ふう……しかし、いい天気じゃて。
こういった大自然では何もかもちっぽけに思えんか、杏子殿?》
アプレクターじいちゃんが実体化した姿で、腰に手を当てて体を反らしながら牛乳(もちろん常温保存可能なロングライフ)を一気に飲みきってからあたしに言う。
人工的な物が殆ど見えない広がる大自然は、つまらないあたしの心を少しでも浄化し解き放ってくれるかと思って。
あたしは立ち上がると、大空に向かって両手を広げ、全身で風を受けてみた。
目をつぶってみれば、通りゆく風の滑らかさが肌を通して心地よくて。
すこし熱く感じる5月の日差しも、風で柔らかな温かさとなって体中を暖めてくれた。
胸一杯に吸い込んでみれば、花の香りと緑の香りが混ざり合った清々しい薫り。
潮騒に似た草の奏でる歌は、懐かしさに似た切なさをくれる。
爽快感が全身の硬さをゆっくりと解いて、あたしは自分がどれだけ緊張してたか思い知らされた気がした。
「そうだよね。
ありがとう、じいちゃん。
あたし、少しだけでも自分を取り戻せた気がするよ」



