「まったく、仕方のない子だわ」
後ろで溜め息を着く気配がして、ミュールの軽快な音が狭い洞窟に響いた。
「杏子さん、少し退いてもらっていいかしら?」
栗毛の美人さんの声が間近に聴こえたけど、あたしはカチンと来てナギの体に抱きついた。
「嫌です!どうせあたしからナギを奪うつもりなんでしょう!誰が渡しますか!!」
あたしは自分でも驚く事を、勝手に口走ってた。
これじゃああの……
『ありす』と同じじゃない!
でも……
やっぱり、渡したくなんてなかった。
たとえナギが、この女性の方を愛してたとしても。
……何でこんなに。
あたしは、むきになるんだろう?
自分で自分が解らない。
こんなに自分が抑えられなくなる感情の波が、気持ちがあるなんて。
一年前のあたしは考えもしなかった。
確かにナギの最初の印象は最悪で、ムカつく事ばかりだったけど。
いつからか、惹かれてた。
もしかしたら、最初に逢った瞬間からだったかもしれない。



