体に纏わりつく、すごく冷たく重苦しい粘ついた空気。
その不気味さと冷感で、体中の鳥肌と産毛が総立ちしそう。
暴風の風上に立ったみたいに、圧迫されて息が苦しい。
だけど……
あたしは全身全霊の力でじりじりと前に進んだ。
ナギを護りたいから。
ナギの体は、まだ黒い『ありす』のもとにある。
少しでも油断させて、その隙を突いて取り戻さなきゃ。
洞窟の薄暗がりの中、ペンライトで見えやすい角度に鏡と黒い『ありす』の顔を照らし出しあたしは叫んだ。
「よく見なさい!今のあんたの顔を!!現実を!
そんな顔で恋しい人があんたを愛してくれると思うわけ!?」
あたしが叫んで間もなく、黒い『ありす』は頭を抱えて、今までにない金切り声を上げた。
体がその場で崩れ落ちると、わなわなと震えて何事かぶつぶつと呟きだす。
髪は多少乱れていたけど、もう普通の大人しい(?)黒髪に戻ってた。
立ちこめてた霧も多少消えて、動きやすくなったあたしは猛ダッシュでナギのもとに走り込んだ。



