《……あなた、生意気だわ》
ひゅん、と鞭がしなるような音がして、今度はあたしの右手に痛みが走った。
黒い『ありす』は……。
その豊かな黒髪を使い、まるで刃物みたいにあたしを裂いた。
かまいたちみたいに。
髪がしなって空を裂く度に、あたしに傷が増えてく。
痛い、なんてものじゃない。
あたしは声を上げたくても、こいつの前で僅かにでも漏らすもんかと奥歯をギリギリと噛みしめて、唇を噤んだ。
《強情な女じゃ。だが、我が身を引き裂かんばかりの私の痛みや嘆きはそんなものではないぞ》
目を爛々と妖しく光らせた黒い『ありす』は、口からしゅうしゅうと妙な呼気を吐きながら、今までにない量の髪であたしを縛り上げ、体中を締め付けてきた。
自分の骨が軋む音が聞こえそうなほど、ものすごい力で。
首を締め付けられて息すら出来ないあたしは、一瞬気が遠くなりそうになった。
その時――
洞窟内に鈍く反響する音が聴こえてふた呼吸ほど後に、あたしは体が自由になった。



