黒い霧があたりに立ち込めて、視界を狭めてく。
『ありす』に触れた右腕だけじゃなくて、あたしは左手も黒い『ありす』の髪に絡みとられてピクリとも動かせなかった。
指という指一本すら石膏か何かでがっちりと固められたみたいで。
いくら力を込めようが、体を使おうが、1ミリも自分の力では動かせない。
わらわらと蠢く水中の藻にも似た黒髪は、ナギの体にも触手を伸ばしつつあった。
《これで、忠司様はわたくしのもの……永遠にわたくしのもの》
黒い『ありす』はそう言うと。
何をするのかと思えば。
上半身を屈み込んで、ナギの顔に顔を近づけて……
「ちょっと何してんのよ!この人は忠司さんじゃなくて他人だって言ってるでしょうが!このどアホ~~!」
あたしはどっかがぷっつんキレちゃったみたいで、もはや恥も外聞も状況把握もなく喚いてた。
「だいたいあんたねえ、好いたオトコに振り向いて貰えなかったからって馬鹿じゃないの!?
こんなコトをしてまでライバルを蹴落とした女を、カレがいいと思ってくれるわけ?」



