血はまだ止まっていない……のに。
「ナギ!駄目だよ!なんでそんな無茶するの……あんたは怪我人なんだから、大人しく守られてなさいよ!」
あたしは涙が止まらずに、自分でも訳が分からないことを口走ってた。
ナギの息は荒いなんてものじゃない。
本当に微かで、そうやって動けるのが信じられない位なのに。
さっきまで意識がなかったのに。
「おまえに守られてる位なら……牛乳風呂に入ってた方がマシだな……」
こんな時でも、ヤツの毒舌は変わらなくて。
「何言ってんの!今度こそ絶対に牛乳を飲ませるから……
大の男が牛乳嫌いなんてみっともないんだからね……」
「今度はうまく騙すんだな……ホルスタインアタマ……おまえは……そんなに胸が大きく……ないが……」
ナギの顔はますます青白くなって、動いたためか出血はシャツやズボンの半分以上を赤く染め上げてた。
なのに……
最後の一本を砕くまで、ナギは決して倒れなかった。
岩を総て退けたとき――
そのまま倒れ込んだ。



