怨念がどうたらなら、やっぱりアプレクターに近いものか、アプレクターそのものの筈なのに。
なんであたしの力が使えなかったの?
だけど、この存在はアプレクターのような、そうでないような。
あたしでも判断しかねる難しいものなんだよね。
……と。
黒い『ありす』が、何か呟いてる。
耳を澄ませてみれば、それは七五七七調のリズムがある。
和歌だった。
いくえもの
いただきこえし
くもいじの
よかにもありす
ねのそうびちる
《この歌を贈って下さいましたのも、戯れでしたの?
わたくしはいつでも待ち続けておりましたのに》
そう恨み言を言う『ありす』の髪が生き物のように蠢きだした。
顔は般若みたいに口がつり上がって……
怖いってば!
でも、なんとか誤解を解かなきゃ!
あたしはどうなってもいいけど、このまんまじゃナギが危ない!
あたしは意を決して、黒い『ありす』に話しかけてみた。



