黒い『ありす』――。
アプレクターじいちゃんが言ってた悪意って、この『ありす』の事?
それにしても、一体どういう事なの?
さっきまで居たのは、確かにヴィジョンで視た白人の少女で、でも今は日本人?になってて。
黒髪に変わった『ありす』は俯いて黒髪をわらわらと揺らしながら、足も動かさずにゆっくり近づいてきた。
纏わりつくのは、濃い灰色の霧みたいなの。
……ぎゃ、こ、怖っっ!!
マジ怖いんですけどッ!!
いきなりホラーですか!
あたしたちに近づく一歩手前、アプレクターじいちゃんがすんでのところでそいつを弾いてくれた。
《なぜ……なぜわたくしを拒むのですか?忠司様!!》
黒い『ありす』は髪を振り乱し、開いた目は赤く光って、心なしか口から牙が見えるのは……気のせいですよね?
忠司様って……
やっぱりイケメンだけあってモテたんだろうな。
振られた人の怨念がこうやって60年経って具現化するくらいに。
……あれ?
でも待ってよ。



