ご飯を食べた後、博君はぽつぽつと自分の境遇を話してくれた。


お母さんは博君を生んですぐに亡くなったこと。

そのお母さんは心臓病の持病があったから、もしも自分に何かあっても生まれた赤ちゃんが寂しくないよう、知り合いから生まれたての子猫をもらってきてたこと。

そしてもらわれてきた黒猫がクロで、いつでも一緒に居て兄弟のように育ったこと。


3年前お父さんが突然に事故で亡くなり、母方の叔母に引き取られたこと。


クロを連れ込むことは許されず、近くの廃屋でこっそり内緒で飼っていたのだという。


「オレはクロがいれば寂しくなかったよ。
クロはオレが泣いてたとき、頬を舐めてくれたんだ。傷ができても舐めてくれたし、寒いときは体を寄せ合って暖まったんだ。
いつも一緒に遊んだし、一緒に寝たんだ。
クロって面白いんだよ。紐でじゃらすと寄り目になるんだ。
あと、よく虫とか蛇を捕ってオレにくれたんだ。嬉しかったな」


「すごく頭がいい猫ちゃんなんだね。優しいし」

あたしがそう言うと、博君は体を乗り出して勢いよく頷いた。