オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




あたしより、生きていて欲しいよ。


《……仕方ないのう。ちと疲れるが、一肌脱ぐかの。杏子殿、少し離れなされ》


アプレクターじいちゃんはそう言うと、あたしの影から抜け出して離れ、白い陰がむくむくと盛り上がり、たちまち着物を着たおじいちゃんに実体化した。


肌が木目調で髪の代わりに髷が緑な点を除けば、着物も姿もまるで本当の人間にそっくりで。


テレビの時代劇に出てきそうな、将軍家の重臣といった格好をしてた。


《この格好をするのも久しぶりじゃ。さて、杏子殿、貴殿はお下がりなさい。こういう時は男の出番じゃ》


アプレクターじいちゃんはそう言うと、幅1メートルはある岩を持ち上げて……


いきなりかじりついた。


…………


しばらくはアプレクターじいちゃんが岩をかじり咀嚼し飲み込む音が響いてるだけ。


あたしといえば……


ただバカみたいな顔で、猛スピードで減ってく岩とアプレクターじいちゃんを見てるしか出来なかった。