別にデート……までは言わないけど。
緑の中を散歩するとか、湖畔で静かに語らうとか。
大それた望みなんてなくて、今日はそんな風にささやかな過ごし方をしたいな……なんて思ってただけなのに。
もっとも、ナギ相手にそれを期待する方が間違ってるのかもしれないけどね。
だけど、どんどんと深い方に踏み入ってるなあ……。
そう思いながら緑のトンネルを潜り抜けた先にあったのは……。
切り立った崖だった。
まるで鋭利な刃物で切り取ったみたいに、すっぱりと直角な岩の壁。
多少風化してボロボロになった部分はあったけど、目立って崩れたりした箇所は見当たらない。
焦げ茶色のその岩肌に、一ヶ所だけ目を引くものがあった。
……洞窟?
ナギは事前に用意してあったのか、電池式のペンライトをジャケットのポケットから取り出してスイッチを入れた。
彼の後に続いて足を踏み入れてみると、その瞬間にぞくりと肌が粟立った。
洞窟の中は本当にただの穴で、少しひんやりした空気が肌にまつわりつく。



