視線を落として腕時計を見れば、9時45分手前をさしてた。
ぎゃ~~~ッ!!
自分の支度を忘れてた!
あたしは慌てて隣の小部屋に飛び込むと、旅行鞄の中から乏しい服を手当たり次第に引っ張り出した。
せっかくオシャレして見てもらおうと思ったのに!
《流石に杏子殿じゃな。ご自分を投げ捨てて犠牲になり、他を引き立てる。命どのやあの栗毛の美人と比べればいつも引き立て役……》
アプレクターじいちゃんが皆まで言わない内に、あたしはげしげしと蹴りを入れまくった。
「これなんか如何ですか?」
絹枝さんの声がドア越しに聴こえたから、あたしはぺらぺらになったアプレクターじいちゃんを隠して扉を開けると。
絹枝さんが手にしていたのは、薄手のグリーン調のワンピース。
ノースリーブノーカラーで、グラデーションの効いた染めに控えめながらふわりと広がるプリーツのスカート。
これなら、あのアンサンブルのボレロが合いそう。
「私をこうして下さったお礼でございますよ。お手伝いさせていただきますから」



