あたしの耳に、小さな笑い声が聴こえた気がした。
動作を止めたあたしに、絹枝さんが怪訝そうな声を出す。
「トキったら、どうしたの?書斎に行こうってあんなに自分で言ったんじゃない」
あたしは気を取り直してドアノブを回して、左肩に体重を掛けてドアを押し開けた。
少し重い木製のドアは蝶番が軋むことなく、滑らかに開いたけど。
あの笑い声は……
いったい何なの?
あたしは気になって仕方なかったし、何だか嫌な気分になった。
アプレクターを感じるのとは違うけど。
体中を虫がはいずり回ったような、ぞわりとした感覚と嫌な気持ち。
絹枝さんの笑い声じゃない。
そんなに近くじゃなかったし、第一絹枝さんが少女に戻ったとしても、体や声は80歳のまんまなんだから。
あの笑い声は……
間違いなく、子どもの。
それも、女の子のものだった。
ここにはそんな子は泊まってない。
ただの幻聴ならいいけれど、それじゃああたしが感じた違和感や不安感の説明がつかない。



