きっと偲びたい人でも居るんだろうな。
もしかしたら、絹枝さんのお父さんは既に亡くなっていたのかもしれないし。
お父さん……
あたしは生まれてからずっとお父さんに疎まれてたけど、あたしはお父さんが大好きだった。
いつだったか、一度だけ家族揃って出かけた事があった。
たぶん、会社の慰労会か何かだったと思う。
家族同伴で交流を深める、会社主催の果物狩りで。
お父さんは世間体や体面を繕うために、仕方なくあたしとお母さんを連れてったんだと思う。
それでも。
あたしは、お父さんと遊びに出掛けられたのが嬉しかった。
みんな次々と葡萄や苺を摘んでいってたけど、昔から要領が悪かったあたしは全然ダメだった。
でも、お父さんに褒めてもらいたくて、一生懸命に大きな果物を探した。
見つかったのは大きな大きな房の、立派な葡萄。
木の陰に隠れてて見えにくい場所にあったけど、あたしはどうしてもそれを取りたくて。
木によじ登って枝を伝い、葡萄に一生懸命手を伸ばした。



