例えば、ぼんやり空想する癖があるとか。
……
確かにあたしも、ぼんやりしがちだけどね。
「こんな不自由がないように、足の怪我が早く治ればいいのに……」
ぽつりと絹枝さんが言ったものだから、その時のあたしは意味を解するまで彼女の言葉が頭に染み通っていかなかった。
ただ不自由だなとさり気なく口にしただけ。
そういう意味でしか受け取れなかった。
階段を降りきると、エントランスホールに出る。
二階と一階を結ぶ階段は建物の中央に配されてるから、二階から出入りするには都合がいい。
エントランスを抜ける手前で、絹枝さんは足を止めた。
エントランスホールからは左右に廊下が伸びていて、扉から向かって右手に食堂や応接室や台所が。
左手には御主人様用の部屋や、書斎なんかがあった。
絹枝さんが見てたのは……
書斎がある方だった。
なんだかとても切ないような、悲しそうな表情を浮かべて。
「もう……お戻りにならないのかしら」
小さく消え入りそうな声で呟いた。



