だけど、都合がいいってもんだわ。
あたしもナギを見るとムカつくし。
食事の給仕をしている時にだって、ナギは絹枝さんにトキさんと呼ばれたあたしより、彼女の方をとても気遣ってた。
いつから博愛主義者になったのやら。
結局その日は夕食を終えてもナギの態度は変わらなかったから、あたしは一度もナギを正面から見なかったし、言葉を交わす事もなかった。
洗濯やお掃除も博君や静江おばあちゃんが手伝ってくれたし、マモル君がせっせと水汲みに行って薪まで調達してくれて。
あたしは随分と助かってた。
絹枝さんはまだらボケが発作的に起きて、博君を息子さんの裕一さんと間違えたり、静江おばあちゃんを祖母と間違えたりした。
ただ、事前に説明してあっても、やっぱり博君の振りはぎこちない。
その代わり静江おばあちゃんの方は、人生の貫禄というか堂々としたもので。
絹枝さんの祖母を演じるとき、なんだかその状況を楽しんでる余裕すらあったみたい。
流石に人生の達人でいらっしゃいますわ。



