オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

『ありす』は人じゃない?

知らないと少女時代の絹枝さんは言った。


絹枝さんは疲れたのか、ドレスを手にしたまんま寝入ってしまったから。

あたしは苦労しながらも、何とか絹枝さんをベッドに寝かせて、散乱したドレスを全部片づけた。

数十着あったそれを丁寧にしまうのも、長旅とみんなのお世話に疲れたあたしには重労働だったけど。

絹枝さんが少しでも気分良く居られるなら、これも仕方ないかな、と思えた。


それにしても、本当にすごい数のドレスだよね。

多分、当時最先端の流行ものだったんだろうな。

ドレスをしまいながら、あたしはため息をつく。

総シルクや紗々を使ったドレスなんて、今買ってもたぶん数万円どころじゃないよね。


ましてやオートクチュールだなんて、いったい何十万するんだろ。


チカたちと一緒に行ったブティックで買ったあのアンサンブルは、今回の旅に持ってきてた。


でも、絹枝さんの華やかなドレスを見てたら、なんだかそのアンサンブルがすごく地味に思えて仕方なかった。