一度湧きあがりだした不信感は、そう簡単に消えるものじゃなかった。
だいたい、ナギはあたしに何も言ってくれない。
そりゃああたしも自分の気持ちがはっきりしてないし、自分から伝えたコトなんて……
バレンタインのあの夜だけだったし。
でも、あれはどっちも告白なんて言えないものだった。
自分の気持ちをはっきりとさせてもいないのに、なんであたしはこんなに腹立たしいんだろう?
第一、あたしはナギの恋人でも何でもないのに。
はっきりと確かな言葉も何もないのに。
今あたしがナギの側に居られるのは、産土探偵事務所の助手という立場だからだけ。
それがなくなってしまえば、あたしがナギの側に居られる理由なんて一つもなくなる。
つまり……
ナギの心ひとつで、あたしはいつでもその立場を失う、ということ。
ひいては、彼の側に居られなくなる。
それを思った瞬間、あたしは心臓が掴まれたように息苦しくなった。
……もしも……
もしもナギが、あの女の人を助手にするとしたら?



