「“Tis the voice of thelobster,I heard him declare”
この文章は駄洒落を使ってますね。例えば……」
ナギはすらすらとその意味や含みを説明してみせた。
「まあ、そういう意味でしたの!
わたくしまったく解らなくて。お恥ずかしゅうございます」
それから何度かそういうやり取りがあって。
その度にナギはすらすらと答える。
まるで、忠司さん本人のように。
絹枝さんは恥じらいながらも、恋する乙女に戻ってた。
……そして1時間ほど経った後。
また夕陽を見上げた絹枝さんは、なぜか「きらきら星よ」を口ずさみ始めた。
空は濃紺に染まりつつあって、一番星が輝いていた。
歌を歌い終えたとき……
絹枝さんはすっかり元のように、慎ましいおばあちゃんに戻っていた。
それも、今まで自分がしていた事は覚えていないみたいで。
テーブルの上にあった本を見つけると、慌てて巾着袋にしまった。



