「またぼんやりが過ぎるとメイドのお鈴に叱られるわよ。
あのおっかないつり上がった目で、『戦時中に緊張感がなさすぎます!』……ってがみがみうるさいんだわ。
お鈴はいつ空襲がくるかわかんないって怯えてたりしてたけど。
陸軍大佐のお父さまが大丈夫だって言ってくだすったんですもの。
このお屋敷に居れば安全なのよ。
大本営の発表でも、我が日本帝国は連戦連勝って書いてあるじゃないの。だから大丈夫よ。
この戦争もきっと勝って終わるのだわ」
そう言った絹枝さんは、慌てて口に手を当てて恥じらう仕草をして。
「あらイヤだわ!わたくしったらお客様の前ではしたない。
初めまして、私は陸軍大佐を務めます木村一樹の娘で、木村絹枝と申しますわ」
まるでドレスを着ているように、ない生地をつまみ上げて優雅に一礼をした。
その時は信じられないほどシャンとしていて。
背もピンと伸びていて、気品すら感じられた。
きっといいところのお嬢様だったんだろうな。



