階段を上っておばあちゃんを通路口の壁にあるベンチにそおっと下ろした。
「気分は大丈夫ですか?電車まで付き添いましょうか?」
あたしが腰を落としておばあちゃんに訊ねると、おばあちゃんは首を横に振って白髪の頭をあたしに深々と下げた。
「ありがとうございます……こんなに気をつかって頂きまして。
あの……どうかお名前をお聴かせ下さいまし」
おばあちゃんに名前を訊かれたけど、あたしは思いっきり躊躇った。
2ヶ月前の産土本家による騒動でスクープされてから、あたしは出来るだけ人前で名前を出さないようにしてたんだよね。
一時とはいえ全国的に報道されまくりだったし……。
ま、いっか!
ごちゃごちゃ考えるのも面倒くさいし、要はバカ正直に言わなくてもいいでしょ。
「あたしは杏子っていいます。あんずの杏に子どもの子って書きます」
名前だけ教えたら、いい名前ですねえだからこんな優しい娘さんに育ったんですね、って褒められちゃった。



