力を入れずにごく素直に、と頭でイメージして落ち着かせた。
だけど、いきなり口と鼻に柔らかいものが押し付けられるとは思わなかった。
「大丈夫だ、落ち着いてこの中で息を吸え」
さっきとは別人みたいに落ち着いたナギの声がした。
しばらく苦しかったけど、ナギの声に従ってゆっくり呼吸してくうちに、だんだんと楽になってった。
それからなんとか普通に呼吸が出来るようになった。
目を開ければ、あたしの鼻と口がビニール袋に覆われてる。
背中に僅かな重みと温かさを感じて肩越しに振り向けば、涙で滲んだ視界にナギが着てた黒いコートが目に入った。
それは……
あたしの体にかけられていて。
ナギは白いシャツ姿のまま、背を向けて口を開いた。
「精神的なもので過呼吸状態に陥ったのだろう。血液中の二酸化炭素濃度が上がったから、発作はずいぶんと楽になったはずだ。
自分の体に起こる症状くらいきちんと把握しておけ。
手遅れにならないうちにな」



