「こいつに触れていいのは俺だけだ」


ナギは無表情なままそう言うと、牽制のための剣をしまった。


だけど……それって。


なんだか。


あたしがどんな表情をすればいいのか自分でもよく判らずに、目を白黒させていれば。


「なにを百面相してる、福笑いアタマ。
ブキミな面を晒すな、目が腐る」


ナギはそうあたしにおっしゃいました。


「あっそう、なら一生あたしの顔を見なけりゃいいじゃない!」


あたしはさすがに腹が立って、ナギの顔を見ずに怒鳴りつけた。


チカとケン、ユリとジュン君たちが困難を乗り越え、いっそう強い絆と結びつきと愛を手に入れたのに、あたしたちはなにも変わらなくて。


……あたしは


やっぱり、ナギにとってその程度なんだ。


たとえ深い仲になったところで、それは何の確証にもならなくて。


確かなものなんて、なにひとつない。


きっとああなったのは、ナギの気まぐれに過ぎないんだ。


だから、そんな風に冷たい態度をとり続けられるんだ。