心臓の鼓動がおかしなくらいに速くなってく。
なんで……
どうしてナギをこんなに意識するの?
熱湯の沸く音であたしは我に返って、ガスコンロのスイッチを切ってから思い直した。
たぶん、ユリたちのことがあったから。だから、いつも以上に神経が過敏になってるだけ。
ナギだっていつも通りに毒舌だったし、あたし一人が意識なんかしてぎこちなくなればまたバカにされるだけ。
しっかりしなきゃ!
ほっぺたを軽く叩いて気を入れ直したあたしは、緑茶を淹れて湯呑みと急須をお盆に載せて、台所からナギに声をかけた。
「ナギ、お腹空いてない?なにか作ろうか?」
「結構ですよ、とさかアタマ。
この前みたいに卵を茹でようとして、器用にも爆破して部屋中に飛び散らせたのは誰だったかな?
ベーコンを焼こうとして消し炭にしたのは誰だったか?」
「そんなの……2ヶ月以上前の話でしょう!
いつまで言ってんのよ、もう!!」
あたしは流石にムカついて、乱暴にお盆をテーブルに置いた。