紅葉の君は美しくて聡明で利発な姫君だったけど、あたしとは大違い。
そんなあたしが宮さまに似たナギに想われるなんて、絶対にないんだから。
「おい、ショコラアタマ。いつまで客を待たせる気だ。さっさと茶ぐらい出せ」
ナギの声で気付けば、いつの間にか事務所に着いてて、あたしは慌てて台所に走った。
あたしが4人分のお茶を淹れてソファーに近づくと、いきなりダッシュで抱きついてきたのは。
あの依頼人だった村田美絵さんだった。
「杏子ちゃん久しぶり!元気そうで何よりだわ」
きゃいきゃいと明るくはしゃぐ美絵さんをソファーから優しく見守ってたのが、小久保正さん。
以前よりも落ち着いていて、おどおどした感じは消えてた。
「今回は依頼料のお支払いと、遅まきながら御礼を言いにお邪魔しました」
美絵さんがそう訪問理由を説明した。
些少ですが、と包まれた封筒から出てきたのは……。
50万円!?
こう言っちゃ失礼だけど、美絵さん家はかなり暮らしに困る生活をしてたはずなのに。



